西暦2113年。
移動機のエンジントラブルにより原野を彷徨っていたミチルとロイディは、
不思議な老人マイカ・ジュクに導かれ、森の中にそびえ立つ宮殿へと辿り着く。
周囲を高い壁で囲まれたそこは、外界から完全に隔離された小都市ルナティック・シティだった。
街は女王デボウ・スホが統治をしており、
神の予言を聞くことの出来る女王はミチルが今日この街へやってくることを知っていたと言う。
ミチルがやってきた事による祝福祭が行われた翌夜、女王の息子、第一王子ジュラ・スホが亡くなった。
この街には、死ぬという概念が無い。
地下に存在する死体安置所でもある冷凍保管庫に入り死体を永久的に保存することが、未来に置ける復活の希望とされているためだ。
(女王デボウ・スホ、また女王の娘、王女クロウ・スホは定期的にこの仕組みを使用することができ、
他人より時間経過が遅いため年齢と見た目の差異が発生している)
誰もが生命を維持したいと考える自然の摂理により、性善説の如くこの街では悪事を働こうという考えに至らない。
もし保管庫に保存されなかった場合、自らの生命は朽ちる運命となっているから。
医師カイ・ルシナの手により、ジュラ・スホも手順通り冷凍保管庫に保存される。
その時ミチルは、ジュラ・スホに首を絞められたような跡を発見する。
亡くなった部屋には眠っていたデボウ・スホが、また下の階にはクロウ・スホ、
そして扉の向こうには女王の世話役シンカ・ワンダも控えていたにもかかわらずどのように事件は起こったのか。
事件について調べながらも、ミチルはこの街に住む日本人マノ・キョーヤのもとを訪れる。
マノ・キョーヤは変わり果てたミチルに気がつかなかったが、ミチルはマノ・キョーヤを知っていた。
5年前の日本、ミチルの恋人であったクジ・アキラは快楽殺人犯であったマノ・キョーヤによって殺された。
その時、ミチルも片目を銃で撃たれ、義眼となった。
復讐からミチルはマノ・キョーヤを殺すつもりで居たにも関わらず、
現在のインテリジェンスな彼の言動と、また共に暮らすサラ・フォトラとのやりとりを見て、精神的に不安定な状態に陥る。
その後、不審な仮面の男にロイディが襲われたこともあり、
ミチルは事件を解き明かそうとするあまり、自らの銃を持ち出し女王を含めた宮殿の人々を脅迫するなどの強硬手段に出る。
「目にすれば失い、口にすれば果てる」
皆が皆、口を揃えて言うこの言葉こそ事件の全てであった。
ミチルが追っていた仮面は神であり、その仮面をつけたものが成す全ての事柄はこの街では
目に見えない、聞こえない、口にすることは出来ないルールとなっていた。
マノ・キョーヤはそのルールを用いて、
例の無い脅迫等の罪を犯し、この街の誰もが裁くことの出来ない存在となったミチルを裁く執行人になろうとしていた。
戦いの末、ミチルは逆手をとってマノ・キョーヤを殺害する。
その夜、定期的に訪れる女王デボウ・スホの冷凍保管の時、ミチルは翌朝この街を出て行くと女王に告げた。
途端、部屋に降りてくる飛行機、そして仮面の男。仮面、そして神の正体は、不思議な老人マイカ・ジュクであった。
マイカ・ジュクは以下の事実をミチルに告げる。
・この街は百年前かつて莫大な財産を得た自分と、友人の二人が作成したものだ。
・だがシステムも老朽化し、いつかは朽ちゆく運命にある。
・マノはこの街の実験的なウイルス的存在として、故意的に街の近くで移動機のエンジントラブルを発生させやって来させた。
・マノに被害を受け未だ健在である唯一の人間ミチルも実験的な存在としてマノと同じくやって来させた。
・マノやカイには、時折この仮面を貸す事もあった。(ロイディが襲われたときなど)
・自分はデボウ・スホを愛していた。しかしながら自らの母親を一人の女性として愛しつつあるジュラ・スホに気づき殺した。
・ミチルは想像通り、それ以上の存在であった。女でなければ、自分の跡として神となってほしかった。
そう、ミチルの身体は女であった。
マノ・キョーヤの事件の時、クジ・アキラの脳は死に、サエバ・ミチルの身体は死んだ。
そのためミチルの脳をアキラに移植することにしたのだが大きさが入らず、結果ロイディにミチルの脳を移植し、
アキラの脳には、ロイディに移植されたミチルの脳とアクセスを取り合う通信機器が挿入された。
マイカ・ジュク、そしてデボウ・スホは冷凍保管に入り、共に眠りについた。
旅立ちの朝、街の周りに放置された移動機の元へ行く途中、
サラ・フォトラがマノを殺された復讐のため銃を持って飛び出し、ミチルの義眼を打ち抜いた。
ロイディとミチルの脳は、修理のため、動かなくなったミチルの身体を回収し、再び移動機へと歩みを進めるのだった。