百年シリーズ 概要

【wiki】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BE%E5%B9%B4%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

【ストーリー】
エネルギー技術の革新により都市国家のような形態の国が点在する世界。エンジニアリング・ライタのサエバ・ミチルとパートナーのロイディは、異国の街へと取材へ出かけ、その度に不可解な事件に巻き込まれる。

【キャラクター】
・サエバ・ミチル
エンジニアリング・ライタ。日本人。片目は義眼。(密室P321)
小柄で十代に見える。凄惨な過去の記憶にしばしば苦しめられる。

・ロイディ
ミチルのパートナでウォーカロン(=ロボット)
背が高い、ハンサム(密室P157)。旧式のため、運動性能はあまり良くない。天気はぴたりと言い当てる。
動作には充電を要する。補助的な発電装置を搭載しているため、長期間充電が出来なくてもスタンバイ状態を維持することが出来る。

・クジ・アキラ
ミチルの恋人。ある事件に巻き込まれ、作中ではすでに故人となっている。

女王の百年密室 GOD SAVE THE QUEEN

西暦2113年。
移動機のエンジントラブルにより原野を彷徨っていたミチルとロイディは、
不思議な老人マイカ・ジュクに導かれ、森の中にそびえ立つ宮殿へと辿り着く。
周囲を高い壁で囲まれたそこは、外界から完全に隔離された小都市ルナティック・シティだった。

街は女王デボウ・スホが統治をしており、
神の予言を聞くことの出来る女王はミチルが今日この街へやってくることを知っていたと言う。
ミチルがやってきた事による祝福祭が行われた翌夜、女王の息子、第一王子ジュラ・スホが亡くなった。

この街には、死ぬという概念が無い。
地下に存在する死体安置所でもある冷凍保管庫に入り死体を永久的に保存することが、未来に置ける復活の希望とされているためだ。
(女王デボウ・スホ、また女王の娘、王女クロウ・スホは定期的にこの仕組みを使用することができ、
 他人より時間経過が遅いため年齢と見た目の差異が発生している)
誰もが生命を維持したいと考える自然の摂理により、性善説の如くこの街では悪事を働こうという考えに至らない。
もし保管庫に保存されなかった場合、自らの生命は朽ちる運命となっているから。

医師カイ・ルシナの手により、ジュラ・スホも手順通り冷凍保管庫に保存される。
その時ミチルは、ジュラ・スホに首を絞められたような跡を発見する。

亡くなった部屋には眠っていたデボウ・スホが、また下の階にはクロウ・スホ、
そして扉の向こうには女王の世話役シンカ・ワンダも控えていたにもかかわらずどのように事件は起こったのか。

事件について調べながらも、ミチルはこの街に住む日本人マノ・キョーヤのもとを訪れる。
マノ・キョーヤは変わり果てたミチルに気がつかなかったが、ミチルはマノ・キョーヤを知っていた。
5年前の日本、ミチルの恋人であったクジ・アキラは快楽殺人犯であったマノ・キョーヤによって殺された。
その時、ミチルも片目を銃で撃たれ、義眼となった。
復讐からミチルはマノ・キョーヤを殺すつもりで居たにも関わらず、
現在のインテリジェンスな彼の言動と、また共に暮らすサラ・フォトラとのやりとりを見て、精神的に不安定な状態に陥る。

その後、不審な仮面の男にロイディが襲われたこともあり、
ミチルは事件を解き明かそうとするあまり、自らの銃を持ち出し女王を含めた宮殿の人々を脅迫するなどの強硬手段に出る。

「目にすれば失い、口にすれば果てる」

皆が皆、口を揃えて言うこの言葉こそ事件の全てであった。
ミチルが追っていた仮面は神であり、その仮面をつけたものが成す全ての事柄はこの街では
目に見えない、聞こえない、口にすることは出来ないルールとなっていた。

マノ・キョーヤはそのルールを用いて、
例の無い脅迫等の罪を犯し、この街の誰もが裁くことの出来ない存在となったミチルを裁く執行人になろうとしていた。
戦いの末、ミチルは逆手をとってマノ・キョーヤを殺害する。

その夜、定期的に訪れる女王デボウ・スホの冷凍保管の時、ミチルは翌朝この街を出て行くと女王に告げた。
途端、部屋に降りてくる飛行機、そして仮面の男。仮面、そして神の正体は、不思議な老人マイカ・ジュクであった。
マイカ・ジュクは以下の事実をミチルに告げる。

・この街は百年前かつて莫大な財産を得た自分と、友人の二人が作成したものだ。
・だがシステムも老朽化し、いつかは朽ちゆく運命にある。
・マノはこの街の実験的なウイルス的存在として、故意的に街の近くで移動機のエンジントラブルを発生させやって来させた。
・マノに被害を受け未だ健在である唯一の人間ミチルも実験的な存在としてマノと同じくやって来させた。
・マノやカイには、時折この仮面を貸す事もあった。(ロイディが襲われたときなど)
・自分はデボウ・スホを愛していた。しかしながら自らの母親を一人の女性として愛しつつあるジュラ・スホに気づき殺した。
・ミチルは想像通り、それ以上の存在であった。女でなければ、自分の跡として神となってほしかった。

そう、ミチルの身体は女であった。
マノ・キョーヤの事件の時、クジ・アキラの脳は死に、サエバ・ミチルの身体は死んだ。
そのためミチルの脳をアキラに移植することにしたのだが大きさが入らず、結果ロイディにミチルの脳を移植し、
アキラの脳には、ロイディに移植されたミチルの脳とアクセスを取り合う通信機器が挿入された。

マイカ・ジュク、そしてデボウ・スホは冷凍保管に入り、共に眠りについた。

旅立ちの朝、街の周りに放置された移動機の元へ行く途中、
サラ・フォトラがマノを殺された復讐のため銃を持って飛び出し、ミチルの義眼を打ち抜いた。
ロイディとミチルの脳は、修理のため、動かなくなったミチルの身体を回収し、再び移動機へと歩みを進めるのだった。

迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS


2114年4月13日。
ミチルとロイディは、生前クジ・アキラがジャーナリストとして訪れていた、
一夜にして森が消え周囲が海になった小さな島、イル・サン・ジャックへやって来る。
イル・サン・ジャックは長い間一切のマスコミをシャットアウトしていること、
街の地形が非常に入り組んでいることから閉ざされた迷宮の島として知られていた。

そこでミチルは宮殿モン・ロゼの女王メグツシュカ・スホと出会う。
彼女はまるで以前訪れた街ルナティック・シティの女王デボウ・スホ同様の雰囲気をまとっていたが、
それはメグツシュカがデボウ・スホの母親であったためだった。(しかし彼女は胎外で育った)

次に出会ったメグツシュカの息子でもある王シャルル・ドリィへ何故自分をこの島迎え入れたのかとミチルは尋ねる。
シャルル・ドリィは、自分にはイル・サン・ジャックに対する権限は何も無い、
全ては母であり女王のメグツシュカが決める、と言う。ミチルを招き入れたのはメグツシュカの意向であった。

その時、従者メイ・ジェルマンが慌しく部屋を訪れる。
僧侶長のクラウド・ライツが、砂で書かれた絵、曼荼羅の中心で頭部を切断され、亡くなっていた。
また、頭部は現場から発見されなかった。

調査の中で以下の内容が判明する。
・この島は2年前から突如太陽の向きにあわせ一日に一回転するようになった。
・イル・サン・ジャックの中にある街シビの中にはシビの生まれでない者が4人居る。
 宿屋の娘イザベル、街の娘ジャンネ、鍛冶屋ケン、そしてルナティック・シティからやってきたメグツシュカ。
 しかしながらイザベルにもジャンネにも妹が居るという。
・彼女達の妹はこの島で作られた彼女達の人工クローン(cron)であった。
 (人口クローンは障害発生の危険性がある事が判明したため、現代社会での製造はなされていない)
 この島ではクローン製造の技術研究を成すための機関がある。
・ケンは曼荼羅生成のため、部屋に滑車等の取り付けを行うことがあった。(砂絵を踏まないよう宙吊りで描画を行う)

ミチルとロイディは島の周辺をエンジンボートで周回したところ、
それを見つけたクラウド・ライツの弟子ウィルから次のような証言を得る。
・あの夜、クラウド・ライツが自分を曼荼羅の部屋に呼んだ。
・クラウド・ライツは自らの傍らに落ちている仮面と鉛のついた木の棒を海に捨ててくるよう命じた。
・その後、曼荼羅の部屋に戻るとクラウド・ライツはあの状態で死んでいた。

その後、シャルル・ドリィが自分の人形のコレクションをミチルに見せてくれるが、ミチルは薬で眠らされ意識を失ってしまう。
シャルル・ドリィは以前この島を訪れたクジ・アキラを愛しており、アキラそっくりのミチルをアキラと考えていた。
薬の効き目は医師レオン・ドゥヌブが報告したよりも強く、シャルル・ドリィは目を覚まさないアキラに話しかけ続けた。
ミチルはロイディを通じて、シャルル・ドリィの告白を聞いた。

自分は先王の子ではない、メグツシュカが産んだというのも事実ではない。メグツシュカに拾われただけ。
本当の母はその場でメグツシュカではない誰か殺され川に流された。だが、誰も恨んでいない。
ただ、それを知った先王の苦悩があまりにも可哀想であったので自分が殺した。
モン・ロゼがマスコミを一切シャットアウトしたのは、このためだ。

ミチルが目を覚まし、シャルル・ドリィの軟禁と唯一人間の警官であるカイリスの追っ手を逃れわかったことは、
シャルル・ドリィの虚言によりミチルがクラウド・ライツ殺害の犯人と考えられている事、
そして、現在が2115年4月21日であり、あれから1年もミチルは眠り続けていたという事だった。
イル・サン・ジャックの周囲にあった海は、ミチルが囚われ行方不明となっている間、突然なくなり砂漠と化していた。

次の日、イル・サン・ジャック脱出のため、シャルル・ドリィに隠された自身の車をジャンネと探していたミチルは、
工場のような大きな荒れ果てた建物の中で頭部を切断され、亡くなっているシビで最高齢の老人オスカを発見する。
頭部は現場から発見されず、それはクラウド・ライツの事件と同様であった。

そこに現れたオスカの妻ミシェルから次のような証言を得る。
・オスカの声が聞こえ、裏の工場跡(オスカが亡くなった場所)へ行くように言われた。
・行くと、そこにあった鍬と袋に入った瓜を持って、丘を越えた橋が架かっている谷へ捨ててくるよう命じた。
・戻ってくると、オスカはこの状態で死んでいた。

その夜、ルナティック・シティの女王デボウ・スホがミチルの宿部屋を訪れた。
メグツシュカからミチルが行方不明との連絡を聞き駆けつけたが、入れ違いでミチルが目を覚ましていたという。
嬉しい再会に外に出て星を眺めていると、デボウは重大な事実をミチルに告げる。

クジ・アキラはこの島にやって来た時、クロンにとても興味を持っていた。
アキラはクロンを作るため、ミチルに近づいた。
ミチルは、クロンだ。

その時突如、狂気染みたシャルル・ドリィがミチルを槍で襲い、
デボウ・スホはそれを庇い胸部を刺される。持っていた銃を奪われ絶体絶命となったミチルに
なおも襲い掛かるシャルル・ドリィを、立ち上がったデボウ・スホの銃が貫いた。

ミチルのもとにやってきたデボウ・スホはメグツシュカが作ったウォーカロンだった。
そしてまた、シャルル・ドリィもメグツシュカが作ったウォーカロンだった。

メグツシュカは、ミチルに告げる。

シャルル・ドリィはウォーカロンだと自覚しないよう自分がプログラムをした。
彼の過去の話は、全て彼の妄想。川で殺されたのは母ではなく、シャルル・ドリィ自身だった。
以前ウィルスで倒れた母親が望んだためにメグツシュカは彼の細胞からクロンを作った。
本来ウィーカロンはセキュリティ的に人間を殺すことは無い。ミチルは人間と認識されなかっために襲われた。
デボウのウォーカロンとシャルル・ドリィは共にウォーカロンだったために殺すことが出来た。

デボウがミチルに告げた事は本当だ。この島ではクロンを誕生させる実験を行っている。
工事に一ヶ月をかけ人工的となった島が回転しているのは、電磁波望遠鏡として機能しシビの人々の精神的な影響を調べているためだ。

僅か一日、周囲を故意的に海とした時、シビの街の人は眠っていた。
偶然にも街でウィルス性の病気が流行して、多くの死者が出た。その間に病気の者を頭脳分離し、新しい形態に切り換えた。
目覚める時は薬品を使って徐々に覚醒させた。目的は、不治の病人を救うことで、彼らのボディを取り替えるためだった。
海の変化に注意を集中させることで、脳と身体をコントロールした。今回砂漠化もそう、何人かを頭脳分離した。

クラウド・ライツとウィルの頭脳は同一だった。1つの頭脳に、2つの身体を持つことが出来た。
クラウド・ライツはそれに気づいた。そのため、ウィルの身体を使い自らクラウド・ライツの身体を殺した。
それはオスカとミシェルも同様だった。

「人の誇りを持つのです、ミチル。躰なんて小事。大したものではありません。機械で簡単に代用できる」

メグツシュカは自らの生命を保つため、定期的な冷凍保存の眠りについた。

ミチルとロイディ、そしてメグツシュカにミチルに仕えるようにと命じられたウォーカロンのパトリシアは、
こうして、イル・サン・ジャックを後にした。